2016年11月27日

酒法「カンペエ」そして「スィイー」

渭城の朝雨 軽塵を浥す

客舎青青 柳色新たなり

君に勧む更に尽くせ 一杯の酒

西のかた陽関を出ずれば 故人無からん

                    ー「元二を送る」 王 維ー


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お国が変わると当然酒の飲みかたも変わってくる。

日本には華道、茶道がある様に酒にも「酒道」という文化が存在するらしい。

「日本酒を豊かな心で味わい、快く酔いを楽しむ」
これが酒道のテーマだそうである。

私の場合、飲んだ帰り道をまっすぐに歩いた記憶があまりないので、高尚な「酒道」とはどうもあまり縁が無さそうだ。

日本の「酒道」が韓国では「酒礼」で中国に行くと「酒法」となるらしい。
酒の作法、マナーといったところだろうか。

中国の酒と言えば「老酒(ラオチュウ)」。長年寝かせた熟成の「紹興酒」の呼名である。

中国の文豪、魯迅が生まれた地、浙江省紹興市あたりが紹興酒の産地である。

昔紹興では女の子が生まれると、もち米を原料にした酒を造って甕に入れ地中に埋め込み、その子がお嫁に行く時に地中から掘り出し、祝い酒として招待客にふるまったという。

そこから紹興酒の名前が生まれた。
いかにも中国的な味のある話ですね。

北京など北の寒い地方では、アルコール度数が50度もあるパオチュウ(白酒)いわゆるマオタイなどと呼ばれる蒸留酒が主流であるが、中国南部で生産される紹興酒は度数も16度程度と日本酒位で口当たりのまろやかな飲みやすい醸造酒で、私もある時期良く飲んでいた。

中国本土では「上海老酒」「蘇州老酒」「福建老酒」等々各地で様々な紹興酒が造られているが、中国本土以外でも「台湾老酒」がよく知られている。

「台湾のへそ」と呼ばれている台湾中部の「埔里(ポリ)」という地域が台湾紹興酒の一大産地で、その地のきれいなおいしい水が良い紹興酒ができる要因として挙げられているようである。

台湾の「酒盛り」はとても面白い。

円卓の大皿には美味しそうな中華料理が並んでいる。

紹興酒の瓶のラベルは「陳年」と書かれている熟成酒である。

さらに寝かせて熟成させたものは「花彫酒」と呼ばれて陳年より高級な紹興酒だそうである。

すでに各人はぐい飲みぐらいの大きさのグラスに手酌で紹興酒を注いで待っている。

何を待っているのか。
「カンペエ」する相手を探しているのである。

やおらグラスを手に立ち上がった台湾人の人が、真向いの日本人に向かって「○○さんの健康にカンペエ!」とグラスを差し向けた。

グラスを向けられた人は、かならず立ち上がって「カンペエ」と言って酒を飲み干し、さらにグラスの底を相手に見せることで、全部飲み干しましたよ、あなたの好意に感謝しますという表示をしなければならない。

いわゆる一気飲みであるが、それが中国流あるいは台湾流の「酒法」なのである。

その「中国流酒法」は酒飲みにとってはそれはもう天国なのだが、「いけないクチ」の人にとっては地獄に等しい場となる。

中国流の宴会は決して一人で飲んではいけない「酒法」であるから、酒豪に目をつけられた人は倒れるまで「カンペエ」をされ続け「カンペエ」でなく「カンベンシテー!」となってしまう。

しかし一つそれを防ぐ良い方法があったのだ。
酒の弱い人は「スィイー」と言えば飲み干さなくてもいいのですよ、と隣の椅子の台湾人が流暢な日本語で私にやさしく囁き掛けた。

スィイーとは「随意」と書く。ご随意にという意味らしい。

「カンペエ」「スィイー」「シェーシェー」
実直に「酒法」を順守しつつ各人は「ベロンベロン」になり「タイペイ」の夜は更けていくのであった。

翌朝私は驚くべき事実に遭遇する。
前夜、台湾代表団との熾烈な酒飲み大会(笑)で日本代表の一角として、まずまずの成績を収めたつもりではあったが、不覚にも最後は力尽きて意識を失ってしまった。

にもかかわらず、ですよ、なんと「二日酔いのふの字もない爽やかな朝」を迎えたのである。

飲み過ぎて頭がおかしくなったのでは、と思ったほどである。

その理由は後日判明した。

酒飲みの天敵は「アセドアルデヒド」であるということは以前から知っていた。
が、紹興酒に憎きアセド氏の濃度を下げて二日酔いを防止する「マグネシウム」がたくさん含まれているという知識は持ち合わせていなかった。

マグネシウムの含有量はウイスキィやブランデーはゼロ、日本酒大吟醸でも100mlあたり1mgであるが紹興酒に至っては何と19mgもあるというのだから、驚くほかない。

そのほかにアセド氏を体外に排出する作用があるとされる「アミノ酸」も多量に含んでいるというから、これはもう「鬼に金棒」というほかない。

「酒学の探求心」に燃える私は、後日検証実験に及んだ。
いわゆる「チャンポン酒」における紹興酒の底力を試す実験で日本酒と焼酎、そして時々紹興酒という酒盛り実験に挑戦したのである。

実験的酒盛りは見事な成功を収めた。効果は確かにあった。
アセド氏に勝ったのである。

今私は、これから忘年会が重なるという同志の方に是非、紹興酒を数本テーブルの片隅に置いて頂いて、ビール、日本酒、焼酎そして「時々紹興酒的忘年会」を実践されんことをお勧めする次第である。

ある時飲み屋で「紹興酒は世界一の酒だな」と喋っていたら、その会話がだいぶ離れた席の知らない客に聴こえたらしく「日本人なら日本酒を呑めッ!」と大声で怒られた。

たしかに日本酒も素晴らしいのは分かってはいるけれど…。

ちなみに物の本によれば
世界の三大美酒は、「フランスのワイン」「日本の純米吟醸酒」そして「紹興酒」だそうである。



かたい絆に 想いをよせて 語り尽くせぬ 青春の日々

時には傷つき 時には喜び 肩をたたきあった あの日

あれからどれくらい たったのだろう 沈む夕日を いくつ数えたろう

故郷の友は 今でも君の 心の中にいますか

乾杯! 今君は人生の

大きな 大きな舞台に立ち

遥か長い道のりを 歩き始めた

君に幸せあれ

                           -詞・曲 長渕剛 「乾杯」-


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「カンペエ」「スィイー」「シェーシェー」そして「再見!」



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posted by いこい at 12:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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