2016年11月28日

「みちのくなまり」を熱燗で

 呼んでいる 呼んでいる  赤い夕陽の故郷(ふるさと)が

 うらぶれの旅をゆく  渡り鳥を呼んでいる

 馬鹿な俺だが あの山川の  呼ぶ声だけは

 おーい 聞こえるぜ

ー詞 横井弘 曲 中野忠晴 「赤い夕陽の故郷」-



DSC_0642.JPG  (おーい)




三橋美智也が好きである。

突き抜けたような高音と少し寂びた声が哀愁を引きずって、情景を醸し出す。

作詞の横井弘の詞がまた抜群に良い。

「哀愁列車」の三番の歌詞のくだりなどは何度聴いてもグッときてしまう。


「窓は二人を遠くする こらえきれずに見返れば

  すがるせつない瞳(め)のような  星がとぶとぶ哀愁列車」


横井弘は作曲家の中野忠晴と組んで「達者でナ」や「おさらば東京」など三橋美智也のヒットメーカーとしても広く知られている名作詞家である。

氏は、出世曲である「あざみの歌」のほか「山の吊り橋」「川は流れる」「下町の太陽」千昌夫の「夕焼け雲」
あのバーブ佐竹の「ネオン川」もそうだったのか
と驚く位、抒情的感覚が素晴らしい大作詞家でしたが、残念なことに昨年(平成27年6月)88歳で旅立たれました。
ご冥福をお祈りいたします。


昭和30~40年代北海道や東北出身のあまたの演歌歌手が誕生した。

三橋美智也、北島三郎、細川たかし、千昌夫、吉幾三、新沼謙治、ほかにも女性歌手も含めて大物歌手がキラ星の如く、数え上げればきりがない。

この方たちが唄う歌は、私の心の中に芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」的に沁み入ってくる。
その昔「演歌の花道」というテレビ番組があったが、私は個人的にこの方たちの歌を「奥の細道みちのく演歌」と呼ばせていただこうと思う。

何がそんなに沁み入るのか。

考えるにそれはあの「みちのくなまり」の所為なのではないだろうか、と思うのである。

「みちのく」といえば現在の福島、宮城、岩手、青森の総称である。
関東以西の多くの人たちにとって「みちのく」は或る意味、未知の憧れの地でもあると推察する。

一面雪に埋もれた詩的な情景、素朴な田園、昔ながらの心のふるさと、囲炉裏ばた、昔話、まつり、宮澤賢治、太宰治、寺山修司、棟方志功…。
いつまでもそっと残しておきたい日本の原風景の一つ、「みちのく」。そんな感じがする。

千昌夫や吉幾三の歌によく「津軽」という詞が出てくる。
演歌の中で「津軽」という語句は単なる土地の名前ではなく演歌の上での「みちのくの象徴」として我々に鋭く迫り来て、「みちのく恋心」をいやが上にもそそってしまうのだ。

敢えて失礼を承知で言わせていただければ、博多出身の氷川きよしや山口県出身の山本譲二が「北国の春」を唄っても、千昌夫の何%ぐらいの味が出せるだろうかと思ってしまうほど、千昌夫や吉幾三たちのみちのくなまりには魅せられるものがある。

日本中どこに行ってもその地方独自の方言やなまりは存在するが、森進一が「女のためいき」を鹿児島弁で熱唱したのを聴かないし、五木ひろしの福井なまりの「千曲川」もまだ耳にしていない。

おそらく作詞家のいではく氏でさえ、みちのくなまりで「北国の春」を書き上げようとしてもそれは至難の業ではなかっただろうか。

そういえば今思い出してみると、宮澤賢治の東北弁の詩や津軽出身のフォークシンガー三上寛たちのように、もしかしたら私が知らないだけで、みちのくなまりを詩や歌詞に仕上げた作品がいっぱいあるのかも知れないが。

実はその「みちのくなまり演歌」が酒と素晴らしく合うのだ。

「なまり」が酒をさらに「熟成」させ、酒もだんだんなまって良い味を出し、やがては五臓六腑に心地よく沁み渡っていくのである。



おやじみたいなヨー 酒呑みなどに ならぬつもりが なっていた
酔えば恋しい 牛追い唄が 口に出るのさ こんな夜は ハーヤイ
田舎なれどもサー 南部の国はヨー
             -詞 里村龍一 曲 桜田誠一「望郷酒場」-




いかがですか。
あなたの酒はぼちぼちなまって来ましたか。
まだなまりませんか?

ビールじゃだめですよ。ウイスキー? ブランデー? 
ダメダメ、焼酎でも無理ですね。

やっぱりここは日本酒。今風にいえば「ポン酒」、しかも熱燗。マ この際
「一升瓶抱えてヒヤ」でもいいか。

話はそれるが今どきの若者で「ポン酒を水割りで」などという不届きな輩がいると聞いてたまげた。
日本文化を水で薄めるようなことをしないでほしい、と言いたくなる。
もっともわれわれが呑んでいる日本酒もすでに原酒を水で割ってあるのだと思うけれど…。

あの天下の大酒のみの「鬼の平蔵」が「オヤジ 酒を水割りで…」ナンテ言ったりしたら、ネタ的にとても面白いとは思うのだが…。(笑)


イヤ 燗が冷めないうちに私の無駄話も打ち止めにして、吉幾三でも ヨシ イクゾッ! オットット…。


涙には、幾つもの、想い出がある 心にも、幾つかの、傷もある

ひとり酒、手酌酒、演歌を聞きながら ホロリ酒、そんな夜も、たまにゃ、なァいいさ

飲みたいよ、浴びるほど、眠りつくまで 男には、明日がある、わかるだろう

詫びながら、手酌酒、演歌を聞きながら 愛してる、これからも わかるよ、なァ酒よ

詫びながら、手酌酒、演歌を聞きながら

愛してる、これからも 、わかるよ、なァ酒よ

わかるよ、なァ酒よ

                            -詞 曲 吉 幾三 「酒よ」-



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「ウン わかる よくわかるョ なぁ酒よ!」

「さっきから一升瓶かかえてなにブツブツ言ってるのヨ…?」

ア ソッか わからない人も若干名いるのを忘れてた! こりゃまた失礼!


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posted by いこい at 06:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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